x31hook's blog

何の考えもなくフリッカーアカウントを削除したせいで古い記事の写真がありません。あしからず。

山本一力『草笛の音次郎』

山本一力を始めて知ったのは、直木賞 を受賞した時である。その時はどこに移動するのも家族で自転車に乗っている変わった人だなぁ・・・という印象だった。

家人が歴史好き(特に江戸時代)なので『あかね空』(受賞作)を買ってあげた。しかし自分では読むことも無く、そのままにしておいた。
家人が読後に「すごく面白かった」と言っていたので、別の機会にふと山本一力の『損料屋喜八郎始末控え』を買って、あげる前に読んだらあまりに面白くてはまってしまった。それから『蒼龍』や『深川黄表紙掛取り帖』など文庫になったものを買い漁っている。(そのうちレビューします。)

で、新居引越し前にエアコン設置の立会いをする時の暇つぶし用に買ったのが『草笛の音次郎』。結局その時はバタバタしていて読めず、今になってようやく読めたのでレビュー。

主人公、草笛の音次郎が渡世人として江戸から千葉まで名代として旅に出る、所謂「股旅物」なのだが、渡世人、股旅という言葉から連想する切った張ったの世界やら丁々発止のやり取りやら、"ごつい"イメージはあまり無い。それは主人公の音次郎が優男であり、渡世人なのに母と一緒に暮らしている家から通ってきていることであるとか、渡世人になった経緯とかによるものだろう。ましてや初めて旅に出るのだからそれに起因したトラブルが色々と立ち起こり、読んでるほうははらはらする。そして様々な経験を通して、音次郎は成長していく・・・。連作短編の体裁を為しているので、読みたいときに読みたいだけ読めるのもよい。

私自身本好きでありながら長い間歴史小説は縁遠い物だったのだが、家人に影響され新撰組に関する書籍をやたらと読んでみたりしたことで食わず嫌いは無くなった。山本一力は中でも楽しく読めると思うので、ぜひ一度お試しください。