実は私、成人男性で普通に働いているものとしては珍しく、運転免許を持っていない。今のところ必要性が無いので問題はないが、仮に自分の田舎に帰って暮らすとしたら、苦労することは間違いない。
(すごく田舎なので)
免許、車(当然)を所持していない為に、割とタクシーに乗ることがある。買い物をして荷物が多い時、どうしても早く家に帰りたい時、どうしても早く会社に着きたい時、などに利用する。
実はタクシーに乗るのは結構好きである。それは、狭い個室に20分間(このぐらいの時間が多い)乗車することで、普段は全く関わりの無い無関係の
他人と人生がクロスするからに他ならない。会社のグチを言ってみたり、色んな話で盛り上がったり。中には変わった人がいたりして面白い時もある。そんな今
までの体験をシリーズで記してみたい。
第一回 わかりません
京都のタクシーの運転手は地方出身者が多い。(そういえば銭湯経営者は石川県人が多いと聞いた。なんでだろう。)特に安値で有名な某タクシー会社はそうらしい。その会社の話。
ある日、どうしても起きられず、タクシーで行かなければ間に合うまいという日があった。電話で予約し、颯爽と乗り込む。遅れそうだからなるべく急いで欲しい旨をきっちりと伝え、後部座席で安堵のため息をついた。
当方タクシー乗車はベテランなので、ウチから会社までの道はいかな方向音痴といえども二つ三つは記憶にある。しかしこの運転手さんは記憶のどれとも合致しないアグレッシヴ(?)なルート取りをした。
当時予備知識が無かった私は、「流石○○、やっぱり違うな」と呑気に考えていた。一見逆方向に走っているように思えたが、「これも何かの作戦だろう」と軽く考えていた。乗車して15分少々で見覚えのある風景が出てくるまでは。
(これ真っ直ぐ行くとウチじゃないの?)と思っていたら、案の定ウチの前で何故か停車!そしてそれまで無口だったのに突然、
「申し訳ありませんでした、戻ってきてしまいました」
とのたもうた。
ここで降りても良かったのだが、そのまま再スタート。メーターは一回リセットされ、賃走ではない状態で走り出す。料金はどうなるのかと思っていたら、途中でおもむろにメーターを倒し、結局通常通りのルートを取り、会社には少々遅れて到着。
料金は、普通に払うよりは半額以下であった。本当はもっと文句を言うべきだとは思ったが、第三次産業の人に必要以上に上からモノを言うのが日本人
の悪徳だとかねがね思っている私は、甘受して料金を支払った。運転手さんがかなり焦っていたのが目に見えたのと、多分前回分(from家to家)は自分で
払うんだろうなと思ったから。でも、よほどのことが無い限り、時間に余裕がないときはこの会社のタクシーには乗るまいとひそかに心に誓ったのである。
(第二回〜謎の霊能者〜 に続く)